前回までのあらすじ コロナ禍のステイホーム中、アパートの一室に簡易的なホームジムを構築。ストレスから解放され、食事と運動に集中した結果、体重110kg・体脂肪率16%まで絞り込み、HbA1cは再び5.4%の正常値に戻りました。「二度とこの状態には戻らない」と誓ったはずでした。しかし、コロナ禍の終焉とともに、世界が元に戻り——私の体も、元に戻っていきました。
リベンジ需要という名の罠
コロナ禍が明けた瞬間、世界は弾けるように動き始めました。
移動が戻った。現地での商談が戻った。そして、今まで来れなかった分を取り返すような「リベンジ需要」の波が、従事する業界全体を飲み込みました。
働くことは大好きでした。問題はその量と拘束時間でした。
長距離移動を伴う営業。片道4〜5時間に及ぶ運転。終わりの見えない処理量。慢性的な残業。コロナ禍で手に入れた「時間の余裕」は、跡形もなく消え去りました。
身体は正直でした。
体重は、あっという間に120kgまで戻りました。
ストレスは血糖値に直撃します。厚生労働省e-ヘルスネットでも、ストレスはインスリン抵抗性を引き起こす要因の一つとして明示されています。さらに、コルチゾールやアドレナリンといったストレスホルモンが血糖値を直接的に上昇させることも医学的に示されています。長時間労働・睡眠不足・孤立という三重苦は、糖尿病にとって最悪の環境です。
それを、私は体で証明してしまいました。しかも3度も。これがとにかく最悪です。体重の乱高下は前記事で書いたホメオスタシスをしっかり体現するデブ具合です。この太りやすさは私の体質でしょう。諦めてはいけないが、認めることが大切だと最近は考えています。
「また、あの感覚だ」
ある日、あの場所に違和感を覚えました。
熟れたような、じくじくとした痒み。
「おいおい……まさか(笑)」
もう経験済みなので笑ってしまいました。
そう、あれは、あの感覚です。例のアレです。
初めて発症したあの日から、何年も経っていました。しかしその感覚は、一度経験したら絶対に忘れられないものでした。すぐに泌尿器科を受診しました。
診断結果は、やっぱり——真菌感染でした。出たよ。
皮膚が、カビ(真菌)にやられていたのです。
これは単なる「皮膚の問題」ではありません。高血糖が続くと、身体の免疫機能が著しく低下します。糖尿病情報センター(国立国際医療研究センター)によれば、血糖コントロールが不良な方は細菌や真菌に抵抗する力が弱くなり、感染症が重症化しやすいとされています。真菌が皮膚で繁殖できているということは——血糖値が、再び危険域に達しているサインでした。
「尿検査をしてください」と言われました。尿蛋白、尿糖がプラスで出ました。今度はもう逃げませんでした。そのまま院内で内科を受診し、血液検査を受けました。
「9.1」という数字との再会
検査結果が出ました。
HbA1c:9.1%
「立派な糖尿病ですね」
主治医は淡々と、しかし確実に、私に現実を告げました。
「先生、私は2回、自力で血糖値を正常値まで下げているんです」
思わず、そう口にしていました。王城メソッドで、薬を使わずに5.4%まで下げた。それを2回。自力で。それはもう鼻高に偉そうに解説しました。
しかし主治医の返答は、シンプルでした。
「うーん、とは言え事実として、今あなたはHbA1c9.1%です。立派な糖尿病だね」
薄々というかもう知っていましたが、まぁ宣告されれば「あぁ・・・」です。認めたくねぇ。
だけど数字は嘘をつかない。どれだけ過去に頑張っていても、今9.1という事実の前では、何も言えない。これが数値で現実です。
これから今現在も大変お世話になる女医先生の主治医は事実に基づいて、淡々と治療を動かし始めました。
初めての敗北。薬を飲むという決断
これまでの2回、私は一度も薬に頼りませんでした。
王城メソッドを信じ、筋トレと食事管理だけで正常値まで叩き落としてきた。それが誇りでもあり、自分のアイデンティティでもありました。
しかし今回、ついに——
薬を飲み始めました。
王城先生に散々教わりながら、こんな状態になってしまった。先生にも当時一緒に頑張ったTwitterの仲間たちにも申し訳ない気持ちでいっぱいです。情けない。本当に情けない。何より自分自身に申し訳ない、身を粉にして働き、無理をさせてきた自分自身の心身にはどれだけ非礼を詫びても足りません。
でも今は、どんな力も借りながら生き延びるしかない。これが現実でした。人間は不完全なんです。完璧な人はいない。自分は違うと思っていても違いました。自分は「出来る」と思っていた。理想ではないとわかった日でした。
同時に何をしても生き延びようと思った日でした。
処方された薬
ここで一つ、大切なことをお伝えしなければなりません。
王城メソッドは、投薬を否定していません。むしろ推奨しています。逃げたのは私です。
王城先生は「数値が悪化しているなら必ず医師の診断を仰ぎ、薬をきちんと飲むこと」を明言しています。さらに「投薬中は血糖値が下がりやすい状態になるため、かえってダイエットも進めやすいボーナス期間」という見解も示しています。
薬を飲むことは「負け」ではないのです。むしろ勝ち筋です。適切な医療を受けながら生活習慣を整えていくことこそが、本来の正しい戦い方でした。私が勝手に「薬に頼るのは情けない」「誰かに知られるのが怖い」と思い込んでいただけで、王城先生はそんなことは一言も言っていない。
ただし——投薬中の筋トレには、低血糖への十分な注意が必要です。これは必ず覚えておいてください。
下記は私が投薬を受けた薬です。
メトホルミン(ビグアナイド薬) 世界で最も広く使われている2型糖尿病の第一選択薬です。主な作用は、肝臓からの糖の過剰放出(糖新生)を抑制すること、そして筋肉などの末梢組織でインスリンが効きやすい状態を作ること(インスリン抵抗性の改善)です。膵臓に直接インスリンを分泌させる薬ではないため、単独使用では低血糖を起こしにくいのが特徴です。
リベルサス(GLP-1受容体作動薬・経口薬) 体内で食事後に腸から分泌される「GLP-1ホルモン」の働きを補・強化する薬です。血糖値が高いときだけ膵臓に働きかけてインスリン分泌を促し、グルカゴン(血糖を上げるホルモン)の分泌を抑えます。脳の食欲中枢にも作用して食欲を抑え、胃の動きを緩やかにすることで満腹感を持続させる作用もあります。世界初の経口GLP-1受容体作動薬として注目されています。
メインテート(β遮断薬) 体重120kgというサイズと慢性的なストレスが引き起こした高血圧と不整脈のために処方されました。心臓への過剰な刺激を抑え、心拍数と血圧を安定させる薬です。
⚠️ 投薬中に筋トレをすると低血糖になる理由
投薬中に運動(特に高強度の筋トレ)を行う場合、低血糖に十分注意してください。 そのメカニズムを知っておくことが身を守ります。知ってると知らないでは雲泥の差です。特に低血糖はその場で死亡する可能性があります。高血糖は何か症状が出るまで気づきもしませんが低血糖はその場で倒れます(経験済み)。
筋肉を動かすと、インスリンに依存せずとも筋細胞がブドウ糖を積極的に取り込み始めます。血糖値が下がる方向に動くわけです。ここに血糖降下薬の効果が重なると、血糖値が想定以上に低下するリスクが生じます。
厚生労働省e-ヘルスネット「糖尿病を改善するための運動」でも、「インスリンや経口血糖降下薬で治療を行っている方の場合は低血糖になりやすいため、運動量の多い場合には補食をとるなどの注意が必要」と明記されています。
また、国立国際医療研究センター糖尿病情報センターは「血糖値を下げる薬を使っている方は、低血糖にならない時間帯を選んで運動を行うことが重要」と案内しています。
投薬中に運動を始める方が守るべきポイント
- 運動前後に血糖値を測定する習慣をつける
- 運動前に血糖値が低め(100mg/dl以下など)の場合は補食をとってから運動する
- トレーニング中にブドウ糖(タブレット形状で売っています)を手元に置いておく
- 運動の強度・時間・タイミングについては必ず主治医と事前に相談する
- 空腹時のトレーニングは特に注意(私は空腹時に高強度の肩トレを行いぶっ倒れました)
参照: 厚生労働省 e-ヘルスネット「糖尿病を改善するための運動」 https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/exercise/s-05-005.html
参照: 国立国際医療研究センター 糖尿病情報センター「糖尿病の運動のはなし」 https://dmic.ncgm.go.jp/general/about-dm/040/040/03.html
薬だけでは「7.5の壁」を越えられなかった
メトホルミンを飲み始めると、HbA1cは徐々に改善しました。
9.1% → 8.0% → 7.5%
しかし、そこから先が動かない。
メトホルミンとメインテーとを処方されていましたが、主治医から追加でリベルサスが処方されました。それでも7.5付近から大きくは動かない。
主治医は言いました。「これだけ飲んでみて変わらないから7.5%から先は、薬だけでは下がらないかなぁ。ダイエットをしないとね。」
承知している(笑)
王城メソッドを知っている私には、理屈は全部分かっている。筋肉を増やせば糖のタンクが大きくなる。速筋を鍛えれば血糖値が下がる。分かっている。
でも——難しいのです。

大人の葛藤。「仕事より筋トレ」は、もうできない
今回の闘病は、過去2回とは根本的に違います。
あの頃の私は独身でした。転職も自由にできた。仕事終わりにジムへ直行し、週7日休まず追い込み続けた。生活のすべてを筋トレに捧げることができた。自粛期間で世界が止まり、私を動かす時間がとれた。
しかし今は違います。
結婚しました。家族がいます。社会的な責任も社内での責任もある。守るべき生活があります。
仕事を辞めるわけにはいかない。転職して時間的余裕のある職場に移ることも、収入を不安定化させることも、今は簡単に決断できない。自分より優先すべき大切なものが、私の周りにはたくさんできていました。
でも、そのことに気づいたとき、はっとしました。
「王城メソッドやダイエットを実践している普通の人たちは、みんなこうやって仕事と両立しながら戦っているんだ」
当たり前のことでした。世の中の糖尿病患者のほとんどは、仕事を持ち、家族を抱え、忙しい日常の中で病気と戦っています。独身で時間が自由に使えた環境が、実はとても恵まれた特殊条件だったのです。
その「当たり前の闘い方」を、私は今、初めて経験していました。
絶望の底に差し込んだ、一筋の光
どうすればいい。
ジムに行く時間はない。移動が仕事量が多く、規則的なスケジュールが組めない。自宅に帰れば疲れ果てて動けない。ホームジムを作っても、アパートでは重量が限られる。
万策つきた頃、人生が大きく動きました。
新居を建てる計画が持ち上がったのです。
妻に、自分の病状を正直に話しました。高血糖が再発していること。薬を飲んでいること。数値が下がりきらないこと。ジムに行く時間が取れないこと。
しばらく沈黙した後、妻は言いました。
「そんなに忙しくてジムに行く時間が取れないなら、家を建てる時に、一室を最初からジムにしちゃったらいいじゃん」
一瞬、意味が理解できませんでした。はてなっち。
「ジムの部屋を?」
「どうせ部屋を設計するなら、最初からジム専用の部屋を作ればいい。行く時間がないなら、家の中にあればいい」
私のパラダイムが崩壊した言葉です。
「行く」必要がなければ、「時間を作る」必要もない。家の中にマシンとパワーラックがあれば、深夜でも、早朝でも、5分の隙間でも動ける。「ジムに行けない言い訳」が、根本から消える。まさに仕組み作り、環境づくりです。
これが、私の人生における最大の転機でした。
次回は、その「要塞(ホームジム)」の設計と構築——私の居場所を作るまでの話です。
それにしても素敵な妻です。怖い人だったら家と保険金が手に入ると狂喜乱舞するところだったかもしれません(笑)

【医学的根拠】
① 高血糖による免疫力低下と真菌感染リスク
高血糖が続くと、体内で細菌・ウイルス・真菌などに抵抗する免疫機能が低下します。国立国際医療研究センター 糖尿病情報センター「糖尿病と感染症」では、血糖コントロールが不良な方は細菌や真菌に抵抗する力が弱くなり、感染症が重症化しやすいと明記されています。
参照: 国立国際医療研究センター 糖尿病情報センター「糖尿病と感染症のはなし」 https://dmic.ncgm.go.jp/general/about-dm/070/070/01.html
② メトホルミン・リベルサスの作用機序
メトホルミン(ビグアナイド薬) は、①肝臓での糖新生(ブドウ糖の過剰産生)を抑制し、②筋肉などの末梢組織でのインスリン感受性を改善することで血糖値を下げます。国立国際医療研究センター 糖尿病情報センター「ビグアナイド薬を服用している方へ」では、インスリンの効きを良くすることで血糖値を低下させる薬として解説されています。
リベルサス(GLP-1受容体作動薬) は、食事後に腸から分泌されるGLP-1ホルモンの働きを模倣し補う薬です。血糖値が高いときだけ膵臓のβ細胞に働きかけてインスリン分泌を促し、血糖を上げるグルカゴンの分泌を抑えます。食欲抑制と満腹感の持続という付加的な効果もあります。
参照: 国立国際医療研究センター 糖尿病情報センター「ビグアナイド薬を服用している方へ」 https://dmic.ncgm.go.jp/general/infomation/110/info_10.html
③ 長時間労働・ストレスが血糖値に及ぼす悪影響
ストレスを感じると、コルチゾールやアドレナリンなどのストレスホルモンが分泌されます。これらは血糖値を直接的に上昇させるとともに、インスリン抵抗性を高めます。厚生労働省e-ヘルスネット「インスリン抵抗性」では、ストレスはインスリン抵抗性を引き起こす要因の一つとして明記されています。
参照: 厚生労働省 e-ヘルスネット「インスリン抵抗性」 https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/exercise/ys-012.html
【参照】王城メソッド 公式情報
王城恋太 公式ブログ「糖尿病も3ヶ月で完治するダイエット」 https://ojyokoita.blog.fc2.com/
王城恋太 公式X(旧Twitter) https://x.com/ojyo_k
X(旧Twitter): @gensho_rebuild
Instagram: @gensho.rebuild
※本記事は著者の個人的な闘病体験をもとにしたストーリーです。糖尿病の治療・食事療法については必ず主治医・管理栄養士にご相談ください。運動療法については、健康運動指導士またはNSCA資格保持のパーソナルトレーナーへご相談されることをお勧めします。


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