【実録・糖尿病闘病記①】1日6リットルの渇きと、砂糖水で自分を殺しかけた話。150kgの元柔道家が見逃した「死の警告」


「最近、異常に喉が渇く」 「1時間おきにトイレに行きたくなる」 「寝ても寝ても疲れが取れず、目の奥が焼けるように痛い」

もしあなたが今、このような症状に心当たりがあるなら——この記事を最後まで読んでください。

「たぶん疲れているだけ」「年のせいかな」そう思っているなら、なおさら。私の体に起きたことを読み終えたとき、あなた自身の体で何が起きているのか、その輪郭が見えてくるかもしれません。


こんにちは、玄照(げんしょう)です。

私はかつて体重150kgの柔道家でした。競技人生を引退した20代後半で重度の2型糖尿病を発症し、HbA1c 9.5%という絶望的な数値から正常値への生還を、なんと3度経験しています。

現在はホームジムと投薬を組み合わせた「大人の闘病スタイル」で数値を安定させていますが、その壮大な物語の始まりは——何も知らず、何も気づかず、自らの首を砂糖水で絞め続けた若き26歳の日の話から始まります。

今回は、その最初の章です。


目次

1. 中性脂肪800。100kg超級の肉体が静かに崩壊していく

学生時代、私は柔道の選手として生きていました。

「練習を人一倍やれば強い」「パワーで技術を圧倒する」——そんな世界線で育った私にとって、健康診断の数値など、まったく眼中にありませんでした。

現役時代の健康診断で**中性脂肪が「800」**という異常値(基準値は150未満)を叩き出したことがありましたが、他の数値に問題はなく、「飯をたくさん食って寝れば関係ない、中性脂肪はでかいから仕方がない」と本気で思っていました。

しかし、その「若さ」は永遠ではありませんでした。

大学卒業とともに引退し、社会人になる際に「さすがにこの体重はまずい」と105kgまで減量。新卒で入社した会社で配属されたのは、訪問したこともない東北地方での営業職でした。

東日本大震災から数年が経ち、復興による街の活況さと人々のエネルギーに感化されて、多くの仕事を若いうちから任せていただき運動部上がりの私は地元の人々に可愛がっていただきました。復興の小さな末端の歯車として沿岸部を走り回った日々が昨日の様に思い出されます。職務は苦しくとも人と関わることが好きな性分で選んだ営業職、また学生時代に叩き込まれた根性をベースに一所懸命邁進しました。

しかしそんな新卒の希望とやる気溢れるパワーで仕事をしている中でも

見た事もない知らない土地。家族や知人が会える範囲にいない孤独感。初めての業務。頻度の高い接待と飲み会。運動が全くできない日々。20代の若者にとってこれらの事柄は静かに複合的に私にストレスを、そして確実にダメージを与えていきました。

寂しさと仕事のプレッシャーを埋めるように、タバコを1日2箱吸い、残業終わりに夜な夜な牛丼、ラーメン、回転寿司を胃に詰め込み、晩酌の酒を大量に流し込む日々。それまでの減量で絞り込んだ体重は、みるみるうちに「脂肪」として戻り、気づけば130kg近辺までリバウンドしていきました。

そのとき、私の膵臓は——私が知らないところで、静かに限界を迎え始めていたのです。


1、5. 毎年届いていた「赤信号」を私は全部ゴミ箱に捨てていた

症状が現れる前から、体は何度も警告を発していました。

会社員になってからも、毎年欠かさず会社の定期健康診断を受けていました。問題はその後です。

結果用紙が届くたびに、再検査の項目が大量についていました。 血糖値、中性脂肪、肝機能——赤字で印刷された「要再検査」「至急かかりつけ医を受診してください」の文字が、何項目も並んでいました。

しかし私は、その用紙を一瞥して、引き出しの奥に放り込んでいました。

「俺はまだ大丈夫」という根拠のない確信

今思えば、あれは「若さ」という名の無敵感と無知が引き起こした行動でした。

20代の頃というのは、どこかで「自分の体は壊れない」と信じているものです。スポーツをやっていた体育会系であれば、なおさらそうです。「これだけ動ける体が、病気なわけがない」という根拠のない自信が、全ての警告を遮断していました。

「どうせ体質的なものだろう」 「去年も同じ項目がついていたけど、体感は何もなかった」 「うるせえよ、忙しくて再検査に行く時間なんてないんだ」 「体がしんどいわけでもないし、別に今すぐどうこうなるわけじゃない」

そんな言い訳を重ねながら、毎年毎年、赤信号を黙殺し続けた。一年目も。二年目も。三年目も。

「知りたくない」という恐怖

ただ、正直に言えばもう一つ理由がありました。

怖かったのです。

再検査を受けて、「本当に悪い数字が出たら」どうするのか——その現実と向き合うことが、怖かった。「どうせたいしたことはない」と思い込むことで、現実を直視しなくて済む。結果を見なければ、自分は「健康な人間」でいられる。当時まだAIやウエラブルデバイスが発達していない時代。医師に相談する以外は医療が遠かった時代です。

そう思う心理、分かる人は多いのではないでしょうか。

健康診断の結果を封も開けずに引き出しに入れている人。再検査の案内が来ても、なんとなく後回しにし続けている人。数値が並んだ紙を見るだけで不安になって、見ないふりをしたい人。

私はそのひとりでした。

しかしその「見ないふり」は、体の崩壊を遅らせるのではなく——加速させていただけだったのです。今となっては、あの赤字の「要再検査」のひとつひとつが、「あなたの膵臓は今年も悲鳴を上げています」という通知だったとわかります。見知らぬ地で孤独だと思っていた私ですがそれ以上に膵臓は孤立無援で私の比ではない孤独と本当に闘いながらインスリンを放出し続け、私自身からも無視されていたと思います。

気づいたときには、体は取り返しのつかない手前まで来ていました。


2. 1日6リットルの水が消える。「異常な渇き」という名の最終警告

異常なほどの喉の渇きと、信じられない頻度の頻尿です。

気づけば、1日に飲む水分の量が跳ね上がっていました。コップ1杯では全然足りない。ペットボトルを買い込んでも、ガンガン飲み込んでいく。最終的には、1日に6リットル以上の水分を消費するという状態になっていました。

1時間の会議に出るだけでトイレを我慢できなくなる。営業中は、次のトイレがどこにあるかを常に意識しながら車を走らせる。夜中も尿意で何度も目が覚め、慢性的な睡眠不足に陥る。

「最近喋りすぎてるのかな」 「暑いから水分摂取量が増えてるだけだ」 「激務で疲れてるだけだ」

当時の私は、底なしの渇きの正体をまったく理解していませんでした。

なぜ、私の体は「渇き」を訴えたのか

これは医学的に**「浸透圧利尿」**と呼ばれる現象でした。

血液中の糖分が異常に高くなる(高血糖)と、腎臓は糖を再吸収しきれず、尿に大量の糖を漏れ出させます。この尿中の糖が水分を引き寄せる性質(浸透圧)により、体の水分がどんどん体外へ排出されていく——これが「多尿・頻尿」の正体です。

その結果、極度の脱水状態に陥った脳が「水分を補給しろ」と強烈な指令を出す——これが「異常な口渇」の正体です。

厳密に言えば、これは「糖尿病」という病気そのものの症状というより、インスリンの働きが鈍り、血液中に糖が溢れ返った**「異常な高血糖状態が生み出すSOS」**です。

当時の私は、このSOSを「ただの疲れ」と完全に見誤っていました。

日が経つにつれて、最初少しの乾きだったのが1秒も我慢できないような地獄の苦しみに変わりました。


3. 砂糖水で自分を殺しかける——「死の無限ループ」

「異常な渇き」に対して、私がとった行動——それが、今振り返ると本当に思考停止するような致命的な選択でした。

コーラ。ジンジャーエール。三ツ矢サイダー。

1.5リットルのペットボトルを買い込み、水のように一気飲みしていました。夜中に目が覚め、トイレへ行き、冷蔵庫を開けてまた飲む。その繰り返し。疲労困憊の脳は、手っ取り早い「糖分と刺激」を求め、私はその本能に従い続けたのです。

しかしこれは——火に油を注いでいるのとまったく同じ行為でした。

「清涼飲料水ケトーシス」という死の罠

高血糖で喉が渇いている状態のときに、糖分たっぷりのジュースを飲むとどうなるか。

ジュースの糖分が吸収されてさらに血糖値が爆上がりし、さらに喉が渇き、またジュースを飲む——この連鎖は、医学的に**「清涼飲料水ケトーシス(ペットボトル症候群)」**と呼ばれる極めて危険な状態を引き起こします。

公益社団法人 日本糖尿病協会も明記しているように、この状態では高血糖が進行し続けた結果、体が糖をエネルギーとして利用できなくなり、代わりに脂肪を分解し始めます。その過程で「ケトン体」という酸性物質が血液中に蓄積し、血液が酸性に傾く「ケトアシドーシス」の状態に至ります。著しい倦怠感、嘔吐、そして重症化すると意識障害・昏睡——最悪の場合、命を落とすこともある。

私は知らず知らずのうちに、自らの首を「砂糖水」で締め上げていたのです。

あの絶望的な夜の繰り返し——「飲んでもまた渇く」「眠れない」「また起きてトイレへ」——を経験したことのある人だけが、あの嫌悪感を分かるはずです。


4. 鉛のような倦怠感と「目の奥の痛み」

頻尿と口渇に加え、私を追い詰めたのが**「鉛のように重い倦怠感」**でした。

朝、起き上がれない。日中も泥の中を歩いているような重さがつきまとう。風邪を頻繁に引き、治るまでに異常に時間がかかる。そして疲労がピークに達したとき、**「目の奥が焼けるような痛み」**が現れました。この世の終わりかと思うような苦しさでした。

体育会系出身で当時完全なデブ思考の私は、ここでさらに致命的な思い込みをします。

「疲れているなら、もっとたくさん食べて、もっと酒を飲んで、たくさん寝れば治るはずだ」

丼もの、麺類、栄養ドリンク——しかし、高血糖が進行した体はインスリンが正常に働かず、食べた糖をエネルギーに変換できません。血液中に溢れた糖は血管や神経を傷つけ(糖毒性)、食べれば食べるほど身体は衰弱していく。

100kg超の体を動かしていたパワーは完全に消え去り、階段を上るだけで息が上がる「ボロボロのデブ」に成り果てていました。

それでも私は、「ただの疲れだ」と信じ続けていました。


5. あなたの体は、今も叫んでいるかもしれない

以下の症状に、一つでも当てはまるものはありますか?

  • 異常なほどの喉の渇きが続いている
  • トイレの回数が急激に増えた(特に夜中の頻尿)
  • 寝ても寝ても疲れが取れない
  • 倦怠感に伴う、目の奥の強い痛み

これらは、血液が糖でドロドロになっている**「高血糖の最終警告」**です。

当時の私は、この異常すぎる体調不良の連続を「ただの過労だ」と本気で思い込んでいました。自分の身体が限界を超えた悲鳴を上げているとは、夢にも思わず。

もし一つでも当てはまるなら——絶対に甘い飲み物で喉を潤そうとしないでください。砂糖の入った飲料は勿論、ダイエットコーラもエネドリもダメです。 そして一刻も早く、内科を受診してください。

「まだ大丈夫だろう」と思っているその油断こそが、最大の敵です。


そして後日、この「無知な150kgのデブ」に、ついに決定的な出来事が起こります。

終わりの見えない体調不良の中で、私がついに己の異常の正体——**「糖尿病」**に気づくことになった、あの衝撃の日のことを、次回お話しします。


【医学的根拠】

① 高血糖による多尿・口渇のメカニズム(浸透圧利尿)

高血糖状態が続くと、腎臓が血液中の糖を再吸収しきれず、尿中に糖が漏れ出します(尿糖)。尿中の糖が水分を引き寄せる性質(浸透圧)により、体の水分が大量に体外へ排出される現象を「浸透圧利尿」と呼びます。これにより多尿・頻尿が起き、脱水状態に陥った体が強烈な口渇を訴えます。厚生労働省 e-ヘルスネット「糖尿病」でも、口渇・多飲・多尿は高血糖が引き起こす特徴的な症状として明記されています。

参照: 厚生労働省 e-ヘルスネット「糖尿病」 https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/metabolic/m-05-002.html


② 清涼飲料水ケトーシス(ペットボトル症候群)の危険性

高血糖状態で喉が渇いているときに糖分の多い清涼飲料水を飲み続けると、血糖値がさらに上昇するという「死の悪循環」に陥ります。これを「清涼飲料水ケトーシス(ペットボトル症候群)」と呼びます。糖をエネルギーとして利用できなくなった体が脂肪を分解し始め、その過程で生じるケトン体が血液を酸性に傾かせます(ケトアシドーシス)。重症化すると意識障害・昏睡・死亡に至るケースも報告されています。

参照: 公益社団法人 日本糖尿病協会「清涼飲料水ケトーシス(ペットボトル症候群)」 https://www.nittokyo.or.jp/modules/sakae/index.php?content_id=305


③ 高血糖による免疫力低下と感染症リスク

高血糖が続くと全身の免疫機能が低下し、細菌・ウイルス・真菌に対する抵抗力が弱まります。糖尿病情報センター(国立国際医療研究センター)「糖尿病と感染症のはなし」では、血糖コントロールが不良の方は感染症が重症化しやすいと明記されています。当時の私が頻繁に風邪を引き、なかなか治らなかった理由がここにあります。

参照: 国立国際医療研究センター 糖尿病情報センター「糖尿病と感染症のはなし」 https://dmic.ncgm.go.jp/general/about-dm/070/070/01.html


X(旧Twitter): @gensho_rebuild

Instagram: @gensho.rebuild


※本記事は著者の個人的な闘病体験をもとにしたストーリーです。糖尿病の症状・治療については必ず主治医・管理栄養士にご相談ください。運動療法については、健康運動指導士またはNSCA資格保持のパーソナルトレーナーへご相談されることをお勧めします。

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